IT保守費の値上げ交渉メール|エンジニア不足を背景に納得を得る伝え方

交渉・要請

「エンジニアの採用が年々難しくなり、人件費を維持できない」「サイバー攻撃対策などで保守の工数が膨らんでいるのに、費用が据え置きのままだ」と悩んでいませんか。

IT業界全体でエンジニア不足が深刻化する中、保守費用の据え置きは、提供するサービスの品質低下や、最悪の場合は保守体制の崩壊を招きかねません。しかし、顧客にとっては「今までと同じ保守内容なのに、なぜ高くなるのか」という疑問が真っ先に浮かびます。

この記事では、IT業界特有の背景を論理的に説明し、顧客と良好な関係を保ちながら保守費用の適正化を実現するためのメール術を解説します。

IT保守料改定の基本マナーと「正当性」を示す3つのポイント

IT保守費の改定交渉は、単なる「お願い」ではなく、システムの安全を守るための「必要な投資」であることを理解してもらうプロセスです。

改定の通知は「次期契約更新の3ヶ月前」をデッドラインにする 顧客側では、保守費は固定費として予算化されています。そのため、次年度の予算編成が終わった後に通知をしても、承認を得るのが非常に難しくなります。契約更新のタイミングを逆算し、少なくとも3ヶ月前には一次連絡を入れ、協議の時間を確保しましょう。

業界全体の「IT人材不足」と「採用コスト高騰」を数値で裏付ける 「人が足りないので上げてください」という説明では、自社の経営努力不足と受け取られる可能性があります。有効求人倍率の推移や、経済産業省が発表しているIT人材の需給予測などを引き合いに出し、業界全体の構造的な変化であることを客観的な事実として伝えることが大切です。

「安定稼働の維持」と「セキュリティ品質」を強調する 顧客が最も避けたいのは、システムが止まることや情報漏洩が発生することです。値上げをしないことで「経験豊富なエンジニアを確保できなくなるリスク」や「最新の脆弱性対応を網羅できなくなる懸念」を誠実に伝え、安定運用の継続には適正な対価が必要であることを強調してください。

【コピーして使える】IT保守費値上げの交渉メール文例

現場の状況に合わせて、説得力のある文面を選んで活用してください。

パターン①:エンジニアの労務費高騰を理由にする場合

IT業界全体の人件費上昇を背景に、体制維持のための改定を求める文面です。

件名: 【重要】システム保守運用サービスのご契約料金改定に関するご案内

〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。
〇〇商事株式会社の丸山です。

平素は、弊社のシステム保守運用サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。

本日は、次期契約更新に向けた保守費用の改定につきまして、大切なお知らせがございます。
これまで弊社では、業務の効率化やコスト削減に努め、価格の維持に尽力してまいりました。

しかしながら、昨今のIT業界におけるエンジニア不足は深刻さを増しており、人材の確保・育成にかかるコストが急激に上昇しております。
今後も貴社のシステムを熟知したエンジニアによる高品質なサポートを安定的に提供し続けるためには、現在の報酬体系を維持することが困難な状況に至りました。

つきましては、誠に恐縮ではございますが、202X年度の契約更新より、下記の通り保守費用を改定させていただきたく存じます。

■改定内容
現行料金:月額 〇〇円(税抜)
改定料金:月額 〇〇円(税抜)

本件の詳細につきまして、改めてオンラインでのご説明をさせていただきたく存じます。
後ほど、候補日をお送りいたしますので、ご確認いただけますでしょうか。

何卒、諸事情をご賢察いただき、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

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署名
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パターン②:セキュリティ対応の負荷増に伴い範囲を見直す場合

DX化やサイバー攻撃の増加により、保守の「中身」が変わっていることを根拠にする文面です。

件名: 保守運用サービスの内容拡充および価格改定のご相談

〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。
〇〇商事株式会社の丸山です。

現在ご提供中のシステム保守につきまして、昨今のセキュリティ環境の変化に伴う運用の見直しについてご相談がございます。

近年、サイバー攻撃の高度化により、脆弱性への対応やセキュリティ監視の頻度を当初の想定以上に強化しております。
貴社の重要な資産であるデータを守るため、弊社といたしましても対応を最優先してまいりましたが、これに伴う工数が大幅に増加しております。

今後も最新の脅威に対する防御体制を万全なものにするため、保守の範囲を一部見直すと同時に、保守費用を以下の通り改定させていただきたく存じます。

■改定のポイント

  1. 脆弱性診断およびパッチ適用頻度の向上
  2. インシデント発生時の緊急対応体制の強化

安全・安心なシステム運用の継続のため、何卒ご理解とご協力をお願い申し上げます。
具体的な改定時期や詳細については、別途協議させていただけますと幸いです。

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署名
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パターン③:クラウド・インフラ費用の変動を価格に反映する場合

クラウドサービスの料金改定や円安の影響を直接的に説明する文面です。

件名: クラウドインフラ費用の変動に伴う保守料金改定のお知らせ

〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。
〇〇商事株式会社の丸山です。

弊社が貴社のシステム基盤として利用しておりますクラウドサービス(〇〇)におきまして、サービス提供元による料金改定が行われました。

弊社でもコスト吸収に努めてまいりましたが、近年の為替変動およびエネルギーコスト上昇の影響もあり、現在の保守費用にインフラ利用料を含めた形での提供が非常に厳しい状況となっております。

つきましては、システムの安定稼働を最優先に考え、誠に不本意ながら下記の通り利用料の改定をお願いしたく存じます。

■改定内容
改定前月額:〇〇円
改定後月額:〇〇円
※増加分は、クラウドサービス提供元の価格改定および為替影響分を反映したものです。

改定の実施時期や詳細な内訳につきましては、添付の資料をご高覧いただけますでしょうか。 ご不明な点がございましたら、いつでもお問い合わせください。

引き続き、安定したシステム環境の提供に全力を尽くしてまいります。

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署名
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まとめ

IT保守費の値上げは、システムの「安全」と「未来」を守るための投資です。

・エンジニア不足や採用コスト増を、業界全体の客観的な事実として伝える
・「安さ」ではなく「安定運用の継続」と「セキュリティ品質」を価値として置く
・予算編成に配慮し、契約更新の3ヶ月前には正式な協議を開始する

誠実な説明を尽くすことで、顧客は「単なるコスト増」ではなく「信頼できるパートナーとの契約維持」として前向きに捉えてくれるようになります。自信を持って、適正な価格交渉を進めていきましょう。

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